2022年8月23日火曜日

2021年度卒業生のクガハルミさん 写真展のお知らせ。「玉響―tamayura―」IG Photo Gallery(東京)

2021年度卒業生のクガハルミさんの写真展「玉響―tamayura―」がIG Photo Galleryにて開催されます。ぜひご覧ください。 


(以下、ギャラリーWebサイトより)

クガハルミは今回が初個展となる新人作家です。20223月に京都芸術大学通信教育部芸術学部美術科写真コースを卒業し、卒業制作から発展したのが今回展示する作品です。

クガは小型デジタルカメラを使い、都市を撮影し、黒と白のイメージをつくりだしています。

都市を歩き、目にとまったものを直感的に、瞬時に撮影する──スナップと呼ばれるこの手法の原点は、19世紀末のハンドカメラの発売に求められます。そして1930年代にライカが普及して以降は、多くの人にとって写真を撮ることそのものが瞬時に撮影することを示すようになりました。それほど身近であり、数多くの写真が撮影されてきたスナップについて、クガはこのように疑問を投げかけます

「『瞬間を記録する』と言います。/この「瞬間」とは、撮影者が体験した「瞬間」のことですが、それは正確な「記録」になるのでしょうか?/つまり、記録された「瞬間」は、撮影者が感じた「瞬間」と同じなのでしょうか?」(ステートメントより)

スナップは直感的な撮影方法であり、考える前に撮ることです。しかし撮影者の体験した瞬間と、写真に記録された1秒にもはるかに満たない時間の視覚イメージはイコールで結ばれるのでしょうか。

クガのこの疑問は時間をジョン・シャーカフスキーが「Photographer's Eye」展(1964年、ニューヨーク近代美術館)で写真の特性の一つとして挙げた「時間(TIME)」を連想させます。しかしクガは「Photographer's Eye」展に収められた作品群とは真逆のかたちでこの問題に向き合います。シャーカフスキーのように動くもの、移ろうものを撮った写真を選ぶのではなく、むしろ人間の目からは不動に見える建築物の一部や、都市の片隅にカメラを向けているのです。

私たちは二つの目で世界を見て、フレームを意識することなく対象を把握し、その周囲との関係を自然に理解しています。しかし、そのような認識は人間という生き物が不断の視覚的更新を行っているがゆえのことであり、私たちの眼球は絶え間なく動いています。写真はその更新をストップさせ、定着させる「非人間的」な視覚メディアだという側面があることをあらためて考えずにはいられません。

「玉響(たまゆら)」とは「しばしの時」を意味する日本の古語。いにしえより時の流れの長短を感覚的にとらえていた人々がつくりだした言葉です。写真が誕生するはるか昔から人間は瞬間を意識し、その短い時間に何かを感じていたのでしょう。クガがこのタイトルを選んだのは、写真発明後の世界に生きる私たちが、発明以前の「瞬間」に思いをはせることなのかもしれません。

私たちは世界をどう認識し、時間をどのようにとらえているのか。そして瞬間という概念と密接につながる写真にどのような特性があるのか。クガの作品はこうした認識への原理的な問いかけがあるのです。

 

タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)

 

会場:IG Photo Gallery

東京都中央区銀座三丁目1317号 辰中ビル3階/東京メトロ日比谷線、都営浅草線 東銀座駅下車

開催期間:96()924()

開廊時間:11:0019:00(910日は17:30まで、最終日は18:00まで)

休廊日:日曜日・月曜日・祝日

 

https://www.igpg.jp/exhibition/kugaharumi.html


■トークセッション(オンライン)

9月10日(土)18:00〜

クガハルミ×タカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)

YouTubeにて、配信いたします。

チャンネル名:IG Photo Gallery